歌舞伎座松鯉伯山講談会
すっかり秋の空ですね。
先日は歌舞伎座の講談会へ行ってきました。今回はそのことについて記します。
十月大歌舞伎 『荒川十太夫』上演記念
神田松鯉傘寿を祝って
2022年9月28日(水)昼の部14時開演
神田鯉花 柳沢昇進録より「将軍饗応」
神田伯山 赤穂義士銘々伝より「安兵衛駆け付け」
神田伯山 赤穂義士銘々伝より「安兵衛婿入り」
-仲入り-
特別鼎談 神田松鯉、神田伯山、特別ゲスト:尾上松緑、司会:吉崎典子
-仲入り-
神田松鯉 赤穂義士外伝より「荒川十太夫」

秋晴れのとても良い天気に、堂々たる歌舞伎座。
歌舞伎座での講談の公演は97年ぶりとのことです。
ぎっしりの客席にわくわくが爆発しそう。
幕が上がり、前講の鯉花さんが登場して大きな拍手。
舞台はこの日のための特別なもの。
真ん中にやや高めの高座がしつらえられ、背景は松と鯉の襖絵に松鯉先生の紋と伯山さんの紋が散らしてあり気品があります。

鯉花さんはキリッと前を見据えて、将軍饗応。
歌うような伸びやかな声が歌舞伎座に響きます。
「封建時代ってエグいな!」と思うとともに、開口一番から凄い!やったー!という感じもする一席でした。
続いて、揚幕のチャリン!とともに花道に登場した伯山さん。
花道に出たところでしばし立ち止まり、感慨深げに歌舞伎座を見渡します。なんだかわたしはこのときが一番緊張しました。
高座はいつもよりゆっくりめな口調と丁寧な運びだったような印象。安兵衛十番斬りは圧巻。安兵衛が堀部家に婿入りして後の、浅野内匠頭と初めてお会いする場面ははじめて聴きました。なんとなくロマンチックなくだりだなと感じたのは、今後の展開を知っているためでしょうか。幻想的で夢のようだなと。やるせない。
マクラも込みで1時間以上は勤められたでしょうか。
鼎談はほがらかに進みつつも、それぞれの想い、特に松緑さんが肚からお話をしてくださっている、歌舞伎荒川十太夫に携わってくださっているという強い気持ちを感じました。
松鯉先生からは「惻隠の情」という言葉が出ました。小さいもの、弱きものへの情、講談のよいところが詰まっているのが荒川十太夫とのこと。年を重ねると視界が狭く、頑なになりがちですが、松鯉先生を見ていると広くこだわりがなくあたたかい人間味を感じられて、目が潤みました。

仲入りを挟んで、いよいよ松鯉先生。
花道の七三で立ち止まり、満面の笑みで両手で大きな丸のポーズ。
吹いた!
花道のあちらとこちらに大きな丸!
丸!
松鯉先生はここが歌舞伎座だろうがどんなお客さんの前だろうが変わらぬ講談、荒川十太夫を聴かせてくださいました。胸が熱い。姿勢が伸びる思いです。いつまでも元気でいてほしい。
幕が一度閉じ、再度開いて、松鯉先生、伯山さん、司会の吉崎さん。
全員で三本締めをして無事お開き。

松鯉先生がすばらしいのはもちろんですが、伯山さんの長年にわたる努力がなければ実現できなかったであろう歌舞伎座での講談会。
終わって、やっとすごい会に来ることができたのだという実感がわきました。
(そして感極まり過ぎたのか片頭痛が勃発。そろりそろりと帰宅…いろいろな意味で涙)
本当にありがとうございました。
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