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早稲田大学演劇博物館関連イベント「黙阿弥と寄席芸」第二弾

みなさま、こんにちは。

2024年となり、1月ももう20日となりました。どのような講談初席をたのしまれたでしょうか?

わたしは深川江戸資料館での講談協会初席、それから太陽初席のパペット講談(十二支の由来)に心癒された新年でした。


さて、新年最初のブログは早稲田大学大熊講堂で催された「黙阿弥と寄席芸」について記したいと思います。


早稲田大学大隈記念講堂

早稲田大学演劇博物館「没後130年 河竹黙阿弥―江戸から東京へ―」関連イベント

「黙阿弥と寄席芸」第二弾


日時:2024年1月19日(金)18:00~20:15

会場:大隈記念講堂大講堂(小野記念講堂より変更)


一龍齋貞橘 「馬方問答」から「鉢の木」

桂藤兵衛 三遊亭円朝作「粟田口霑笛竹」より「佐賀町河岸」

  - 休憩

対談:一龍斎貞橘

   三代目桂藤兵衛

   今岡謙太郎(武蔵野美術大学教授)

   児玉竜一(演劇博物館館長)



参加募集当初は小野記念講堂での予定でしたが、申し込み多数により大隈講堂へ変更となっての開催。


まず、貞橘先生の講談からスタート。

講談でおなじみの「鉢の木」をその前段である「馬方問答」と合わせての口演。本来であれば両方あわせると1時間を超える内容ですが、この日は特別編集版で30分。

しんしんと降る雪の中での修行僧一行(実は北条時頼一行)と馬子たちのやりとり(馬方問答)から、旧臣である佐野源左衛門常世のもてなし(鉢の木問答)。そして佐野源左衛門の鎌倉駆け付けまで。序盤ののどかさ、中盤じっくりとした聴きごたえ、そして終盤駆け付けの躍動感。さまざまな登場人物たち、景色、読み口の調子の変化をたのしみました。〽越すに越されぬ酒屋の前~! という馬子唄が耳から離れない(のはわたしだけ)


次に落語、桂藤兵衛師匠の登場。わたしは一時藤兵衛師匠にハマっていた頃があったのですが、ご無沙汰してしまってとても久しぶりに高座を拝見しました。江戸っ子を絵にかいたような、とでもいいましょうか。真に歯切れよい口調です。「粟田口霑笛竹」(あわたぐちしめすふえたけ)。「粟田口」の演題は耳にしたことがありましたが、実際聴くのは初めてでした。佐賀町というから、隅田川右岸、永代橋近辺からははじまる銘刀粟田口を巡る物語。三題噺(国綱の刀一節切船人)から生まれたそうです。


大講堂内

そして、4者による対談。

寄席芸大好きワクワク4人組によるたのしさ大爆発な45分でした!


講談、落語の実演家による芸の継承についての守るべきこと、実際のところ、分岐、私見。研究者による演目の成り立ち、芸能(芸人)の交流について。黙阿弥テーマからの脱線もありつつも、今岡先生による充実のレジュメに沿いつつ大いに盛り上がりました。


講談「鉢の木」の中には、能「鉢木」の謡と同じ詞章がそっくりそのまま残っている点が指摘され、そのくだりを(突然フラれて焦る)貞橘先生が再現。確かに言葉や調子に不思議な雰囲気がありました。そしてこの読み物は、木偶坊伯鱗 → 貞水 → 貞橘と言う流れ、一言一句で伝わっているそうです。


落語「粟田口」には円朝の口調が残っているのか?という疑問。最初期の速記本は再現度が高いと思われるとのことだが、林家正蔵師匠は「自分の言葉でおやんなさい」との教えだったとのことで、口調そのままは伝わってはいないのではないかと藤兵衛師。


また、「鉢の木」の話の流れで、木偶坊伯鱗のラジオ音声「真田の入城」を全員で聴くという貴重な体験の時間もありました。この伯鱗は売れてはいなかったが、昔のことを大変よく覚えており、速記本から講談を起こし直しする際に、当時の講談師が伯鱗にお伺いに行ったというエピソードがあるそうです。


世の中の移り変わり、客層と芸をどのように合わせていくかという話題の中では、貞橘先生が貞水先生の言葉を引いて「(芸を)わかりやすくするのと稚拙にするのは違う」とおっしゃっていたのが心に残っています。

そして、江戸言葉に詳しい藤兵衛師匠は昔の人たちは耳から言葉を覚えた。という興味深いお話をしてくださいました。例えば鬼子母神(きしぼじん)を昔の人は聞き違い及び思い込みで「き“ち”ぼじん」と言っていたと。(なんか同じような例を講談でも耳にしたことがあるのですが思い出せず…。なんかお姫様の名前かなんかだったと思うのですが…)


貞橘先生が録音で残っている六代目貞水「大徳寺焼香場」に触れて、(この難しい内容のまま、そしてこの読み方で)「大衆芸能として成り立っていたと思うと驚く」というようなことをおっしゃられていて、わたしも心の中で「確かに驚く!」と思うとともに、当時の講談の客席の成熟度に唖然としてしまいました。わたしはすぐに落伍者となりそうですよ…(とほほ。(でも好き。


話題すべてをここに残すことはできませんが、大変興味深い時間と今後のたのしみが拡がりました。

実演と研究の交流、こういうものがあればまた是非参加したいです。

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