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清水次郎長の小説『男の愛 たびだちの詩』

みなさま、こんにちは。

桜がちらほらと咲き始めた東京周辺です。みなさまの地域はいかがでしょうか?


先日、清水(現・静岡市清水区)を訪ねたブログを書いたことから、なんだか清水次郎長ブームの灯がひっそりとともったわたし。

清水次郎長が主人公として登場する本を読みましたので、ご紹介いたします。


町田康『男の愛 たびだちの詩』(2022年左右社刊)

通称、清水の次郎長がヤクザになるまでを描いた一冊。

清水の次郎長、これは通称。本名、山本長五郎が渡世人として、平たく言えばヤクザとして清水の次郎長になるまでの物語です。評伝小説というよりは、多分にフィクションを織り交ぜて面白おかしく、時に人の心の暗闇を覗き込むような、そして、ヤクザの豆知識も得ることができます。


侠客ものの講談を聴いていると、「男になる」「売り出す」「国を売る」「旅に出る」「草鞋を脱ぐ」「仁義を切る」などの言葉に出会います。なんとなく雰囲気で理解をしていますが、ちゃんと説明を聞いたことはない。講談中に説明が多いと気がそがれますものね。

そんななんとなくわかっている言葉、ヤクザの世界のことなどを小説中で説明もしてくれて、ふむふむ。そうなのかぁ。と頷くことしばしば。

例えば、国定忠治や笹川繁蔵が地元にいられなくなって長く諸国を流浪する(=国を売る)にあたり、各地の侠客たちのお世話になるわけですが、そのネットワークや関係性が説明されています。


また、町田康さんの小説をお読みになった方なら独特の調子や言葉遣いがクセになるのはお分かりになるかと思います。そう、あのスピード感や高揚感、ズラシ加減。たまりませんよね。

例えば、『逆水戸』(逆・水戸黄門の意)は、出だし2行で爆笑してしまいました!

静謐硬質から柔軟剽軽を行ったり来たりの文章で軽くたのしく、ときどき墨を飲んだような複雑な心境の吐露にじっと目をこらしながら、高いエンターテインメント性で読み切れる魅力があります。


町田康さんは浪曲にも明るく、浪曲師の京山幸太さんと御一緒にイベントもされているようです。町田さんの『告白』は、浪曲でもおなじみ「河内十人斬り」を題材にした作品です。


『男の愛 たびだちの詩』は次郎長がヤクザになるまでを描いた作品。ヤクザ以後の次郎長についても執筆されるのでしょうか? ぜひ続編を希望します。

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